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闇金に借りただけで口座凍結されることがあります

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投稿日:2019.02.15

最新更新日:2025.03.18

司法書士

闇金に借りただけで口座凍結されることがあります

※本記事は2013年11月に執筆された記事を現在の闇金手口に合わせて加筆・修正したものです。 凍結された口座の通帳のイメージ 司法書士の下東です。 当事務所では,闇金から振り込みを受けた銀行口座は速やかに解約するようお勧めしています。 理由は,

  • 押し貸し被害が懸念されること
  • 口座凍結リスクがあること

の2点からです。 押し貸しについては「闇金押し貸し被害の防止策と振込まれてしまった場合の対処法」で書きましたので,今回は口座凍結リスクについてご紹介したいと思います。

そもそも口座凍結とは

口座凍結とは,銀行口座が突然止められてしまい,入出金ができなくなることをいいます。

 

口座が凍結されてしまう理由としては,以下の3つに分けることができるかと思います。

一つ目は,相続絡みです。相続が発生した場合に,相続人が確定されるまでの間勝手な引き出しを防ぐ必要性から口座凍結が行われます。

 

二つ目は,銀行に対する債務について債務整理を行う場合に,銀行が,自行の貸付債権と預金債権とを相殺するために口座を凍結するという場合です。

 

三つ目は,犯罪利用預金口座と認知されたことにより凍結されてしまうケースです。 本記事では,三つ目の犯罪利用預金口座と認知されたことにより凍結されてしまうケースについて以下ご紹介していきます。

振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結

犯罪利用預金口座とは,振り込め詐欺や闇金などの振込利用犯罪行為の際の振込先となった口座を指します(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(「以下,振り込め詐欺救済法」といいます)2条3項・4項)。

 

そして,金融機関は,捜査機関等からの情報により犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めるときは,当該預金口座等に係る取引の停止等の措置(口座凍結)を適切に講ずるものとされています(振り込め詐欺救済法3条1項)。

ここにいう捜査機関等とは,捜査機関,弁護士会,金融庁及び消費生活センターなどの公的機関,並びに弁護士、認定司法書士を指すものとする運用がなされています(全国銀行協会事務取扱手続参照)。 闇金の振込先として使われた口座は犯罪利用預金口座とされ,警察や弁護士・司法書士の情報提供により口座凍結がなされるということです。

闇金に借りるだけで口座凍結リスクがある?

口座凍結リスク

闇金の使用する口座は,犯罪利用預金口座にあたります。そのため,闇金の口座は凍結されることが多いのですが,それだけでなく,借受人(被害者)の口座が凍結されてしまうこともあります。

 

闇金にお金を借りるという行為は,違法行為とはいえず,闇金からお金が振り込まれた口座が犯罪ではありません。 ですから「闇金に金を借りている」という理由で口座を凍結されることはありません。

 

しかし,闇金から借りただけなのに口座を凍結されましたという相談は多数あります。 これは何故なのでしょうか。

その口座凍結は「客振り」が原因

借りただけに過ぎないのに口座が凍結されることがあるのは,闇金の使う「客振り」という手口が原因です。

客振りというのは客に振り込ませるという意味です。以下,詳しく説明します。

 

通常,闇金からの貸付金の振り込みは当然ですが闇金からなされます。 闇金自身が管理している口座から被害者に直接振り込みをするのがスタンダードな貸付方法です。 お金の流れは 闇金⇒あなた ということになります。

一方,客振りの場合は,業者は貸付金の振込みを直接行わず,自己の客に振り込ませます。 つまり,他の被害者の方は,返済の際にあなたの口座を指定されて返済金を振り込むのです。 お金の流れは 他の被害者⇒あなた となります。

 

闇金からすれば,貸金の回収と新規の貸付を同時に行うことが出来るというわけです。 客振りの手口が用いられた場合,あなたが受け取ったお金は他の被害者が振り込んだ被害金ということになります。

口座が突然凍結され使えなくなる理由

ところで,闇金被害に遭われてお困りの方は,警察,弁護士又は司法書士に相談に行くことが多いと思います。

上記に挙げた客振りの手口により振込をした被害者がそうしたところに相談に行ったらどうなるでしょうか。

その相談先では,被害額を確認するために,闇金に振込んだ際の明細書などを確認します。 そして,闇金への返済先口座と確認できた場合は,その口座につき凍結措置を執りますが,その対象にはあなた名義の口座も含まれていることになります。

つまり,あなたの口座は犯罪利用預金口座と認識されて凍結されることになってしまいます。

以上が闇金から借りただけなのに口座凍結される理由です。 凍結されてしまった場合,例えその口座に生活費全額が入っていたとしても,すぐに引き出すことはできません。 万一こういった被害を受けた場合,非常に苦しい状況に置かれてしまうのです。 こうした被害は今全国で起こっています。 この手口を私が初めて認知したのは平成21年ころでしたが現在はそのころよりもこうした被害が増えている印象です。 闇金の手口が複雑化・巧妙化していることの証左といえるでしょう。

上記手口に関する新聞報道

これに関する新聞報道として,当事務所が以前に取材を受けた記事がありますので以下に引用しておきます。

ヤミ金、手口巧妙化 口座凍結の恐れ、別の客介し融資金回収

ヤミ金融から金を借りたら預金口座が凍結された-。こんな相談が弁護士や司法書士に相次いでいる。

ヤミ金業者が客から金を回収する際、関係ない別の客の口座を通して「迂回(うかい)回収」をしているためだ。正規の業者を装ったヤミ金業者から融資を受けた人の口座が「犯罪利用口座」として凍結された例もあり、専門家は「被害防止のためにもヤミ金との取引をやめてほしい」と呼び掛けている。

 

「年利9・9~14%」。福岡県内の40代女性は今年1月、インターネットで貸金業者のホームページを見つけた。正規の貸金業者と思って融資を申し込むと、まもなく口座凍結の通知が金融機関から届いた。「突然のことであぜんとした」と、女性はヤミ金業者への怒りをあらわにする。

 

女性の口座には、複数の名義人から現金が入った。振り込んでいたのはヤミ金業者ではなく、その債務者たち。債務者らは業者の指示で、女性の口座に返済金を振り込んでいたという。このうち1人は石川県警に「法外な利息を取られた」と被害を訴え、女性の口座が止められた。 迂回回収は、ヤミ金業者が債務者から金を回収する際、自らの口座に直接返済させず、融資を申し込んでいる別の客の口座に振りませて、この客を通して回収する仕組み。債務者が警察に相談しても凍結されるのは客の口座だ。(中略)  もし口座が凍結されれば、生活への影響は計り知れない。凍結口座の名義人の情報は、警察庁から全国銀行協会などに提供され、加盟銀行では新たな口座を作れなくなる。 (中略)ただ、警察庁は「ヤミ金と関係ないことが証明されない限り、凍結口座名義人リストから外すのは難しい」と慎重な姿勢を崩さない。

 

年間800件ほどヤミ金の相談を受ける下東洋介司法書士(東京)は「ヤミ金と取引しないのが一番だが、正規業者を装うケースもあるため、金融庁のホームページにある『登録貸金業者情報検索サービス』などを利用して正規かどうかを見分けることが重要だ」と話している。

2014年03月18日 03時00分 西日本新聞 http://qbiz.jp/article/33913/1/

闇金業者は,自分達の使っている口座が凍結されると,新たな口座を調達するためのコストが要したり,場合によっては口座を辿られることによって逮捕されるリスクを負います。 上記手口はこういった闇金が自ら負うべきリスクを被害者に転嫁するものであり非常に悪質な手口であるといえます。

口座凍結の防止策は?

このような口座凍結被害の防止策としては,まずは怪しい金融業者から借りないことであるのは当然ですが,既に借りてしまっている場合は,振込を受けた口座は全て解約してください。 これ以外にありません。

 

引き落としになっている各種料金の支払は速やかに他の口座に変更し,面倒でも闇金に教えてしまった口座については解約を急ぐべきです。 たまに解約の手間を惜しんで口座をそのままにしてしまう方がいらっしゃいますが,凍結されてしまった場合すぐに解除してもらうことはできません。

 

もちろん,事情によりすぐの解約が難しいケースもあるとは思います。しかし,凍結リスクを負ったまま利用を続けるのは得策ではありません。 給与の受取口座にしているというような理由であれば,受取口座を変更してでも該当口座は解約することをお勧めします。

口座凍結される恐れのある闇金手口の見分け方

もっとも,闇金に借りただけでどんな場合でも口座凍結リスクを負うわけではありません。 闇金の手口によっては問題ない場合もあるので見分け方の一例を紹介しておきます。

 

一つ目の着眼点は振込名義です。 闇金が振込んできた際の振込名義が名字のみなのかフルネームなのかを見てください。 誰だか分からない方からのフルネームでの入金の場合,その方が何も知らずに闇金への返済として振り込んできた可能性があります。 その場合は,上記に述べたとおりその方が警察等へ行くことによりあなたの口座が凍結されることがあり得ます。

他方,闇金が名乗っている名字のみでの振込みの場合はリスクは低めです。 例えば,闇金の担当者名が「田中」の場合に「タナカ」名義で振り込まれた場合です。 この場合は闇金が自分で直接振り込んできたと考えるのが自然です。

 

平成27年10月追記: 最近は闇金が名乗っている名前を振込名義とさせる手口もみられるようになりました。 その場合,被害者からの振込であっても闇金業者名(あるいは闇金が名乗っている個人名)からの振込になります。 よって,単なる名字のみで入金があったとしても油断はできません。

もうひとつの着眼点は,闇金からの入金確認の有無です。 他の債務者に振込させる場合,闇金は自ら振り込みをするわけではないので振り込みが確実にあったかどうかや振込額をあなたに確認してきます。 普通そんなことは当然知っているはずですが,この手口の場合はあなたに確認しないと分からないため振り込みがあったらすぐに連絡してくるよう求めてきます。 よって,闇金がこういった確認を求めてきたらこの手口が用いられている可能性を疑ったほうが良いといえます。

口座凍結の解除方法

闇金から借りただけなのに口座を凍結されてしまった場合,次の各対処法により解除される場合があります。

警察による口座凍結の場合

銀行に聞けばどこの警察署が凍結要請を出したのかは分かりますから,その警察署と連絡を取って闇金との取引経過を正直に話してみてください。 警察ではあなたが口座を売ったのではないかと疑ってきますが,そうでないのなら変に隠し事はせずに全てを話してみましょう。

 

売ったわけではないということを証明するために通帳の提出を求められることがありますが,その場合はできる限り提出しましょう。 疑いが晴れればそう時間はかからず凍結が解除される例が多いようです。

弁護士や司法書士による口座凍結の場合

前述のとおり,口座凍結は,銀行に対する要請により弁護士や司法書士でも行うことができます。

そこで,弁護士や司法書士による口座凍結の場合は,彼らと交渉をした上で凍結要請の取下げをしてもらう必要が生じます。 どこが凍結要請をしたのかは銀行で教えてもらえますから,連絡先を聞いてまずは電話をしてみましょう。

 

闇金ではなく被害者だということを分かってもらえれば通常は解除してもらえます。 ご自身での交渉が難しければ代理人を立てることを検討してください。

まとめ

まとめます。 今回は,

・闇金に借りただけで口座凍結されることがある理由

・凍結を防ぐには口座の解除が有効であること

・凍結されてしまった場合の解除方法

についてご紹介しました。 本当にお金に困っているのに借りるアテがないというとき,闇金でもなんでもいいから借りたいと頼ってしまうお気持ちは分かります。 しかし,闇金は単に高金利な金融業者というだけでなく,取引の内容も違法・不当なことがほとんどであり,上記のような思わぬ不利益を受けることがあります。

 

このような悪質業者との取引は,目先のお金が工面できる点を差し引いてもデメリットが極めて大きいものです。

また,闇金に対する口座売買・口座譲渡は何罪にあたる?逮捕リスクはどれくらいかで詳しく紹介していますが,闇金との取引をきっかけに口座売買に走り,逮捕されてしまうという方もいます。

 

闇金と関わりを持つのは止めて,お金の問題は債務整理を行う等適切な方法によって解決すべきでしょう。

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