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闇金に対する口座売買・譲渡は何罪にあたる?逮捕リスクはどれくらいか

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投稿日:2013.11.13

最新更新日:2024.12.11

司法書士

闇金に対する口座売買・譲渡は何罪にあたる?逮捕リスクはどれくらいか

闇金に対する口座売買・譲渡は何罪にあたる?逮捕リスクはどれくらいか

口座売買により逮捕 司法書士の下東です。 売買又は返済代わりとして,闇金に対して口座を譲渡してしまう方が急増しています。 相談が多い事例としては,小遣稼ぎになると唆されて口座を売買してしまうケースや,闇金から金がないなら口座を渡せと言われて返済の代わりに譲渡してしまったというものがあります。
上記いずれの場合でも,譲渡した銀行口座が犯罪に使われるであろうことは通常の判断力がある方であれば容易に想像できるはずです。 しかし,他に選択肢のない状況に追い込まれてしまうせいか,悪いこととは知りつつも口座を渡してしまうようです。
なかには1口座2万円払うなどと言われ,10口座以上開設して闇金に売却してしまうような方もいます。 口座売買が違法であることは,銀行や公共機関にポスター等があることからご存知の方がほとんであるはずです。
しかし,どう違法なのかの理解がないと「ついやってしまう」方が出てきてしまいます。 また,違法であることが理解できても,逮捕されるリスクがないなら問題ないと考えて犯行に及ぶ方もいます。 そこで,今回は口座売買の防止のために,その違法性や逮捕リスク等について書きたいと思います。

最近は口座売買はしていないのに凍結されてしまったというご相談も増えています。詳しくは,「闇金に借りるだけで口座凍結されるリスクを負います」も併せてお読みください。

闇金への口座売買は何罪に該当する?

闇金との口座売買のイメージ

闇金に対して口座を売買・譲渡すると何の罪に問われるのかというと大きく分けて次の2つです。

  • 詐欺罪
  • 犯罪収益移転防止法違反

簡単に違いを説明すると,売買目的で新しく口座を開設すると詐欺罪に,既に持っている口座を売却すると犯罪収益移転防止法違反となります。 犯罪収益移転防止法違反についてはまたの機会に詳しく触れるとして今回は詐欺罪について考えてみましょう。

口座売買は銀行に対する詐欺になる

闇金に対する口座売買時に問題となる詐欺罪は,口座開設詐欺や通帳詐欺とも呼ばれ,銀行で口座を新規に開設して通帳等を受領する行為につき銀行に対する詐欺罪として成立します。
詐欺罪というとお金を騙し取るイメージを持たれると思いますが,通帳やキャッシュカードを騙し取る行為にも詐欺罪は成立します。 以下,詳しくみていきます。

詐欺罪の構成要件

まずは詐欺罪の条文からみてみましょう。

刑法(明治四十年法律第四十五号)
(詐欺) 第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 (略)

とあります。 1項詐欺罪は, 「人を欺いて」「財物」を「交付させた」 場合に成立する犯罪です。 構成要件は次のとおりです。

まず,客観的要素として,

① 人を欺く行為(欺罔行為)
② 欺罔行為に基づく交付権限者の錯誤
③ 錯誤に基づく交付行為
④ 交付行為に基づく財物の移転
⑤ ①~④の因果関係

が必要であり,主観的要素としては
⑥故意
⑦不法領得の意思
が必要です。

闇金に対する譲渡目的での口座開設

これを次のようなよくある闇金被害事例にあてはめて考えてみます。

東京都在住のAさんは,「アバロン」と名乗る闇金業者からの借入れを繰り返し,高利ではあるもののなんとかやり繰りをしてしました。

ところが,今月から残業が一部認められなくなったことから給与がさがってしまい,アバロンへの返済が難しくなりました。 そこでAさんは,今後の返済方法を見直ししてもらおうと思いアバロンの担当者に相談しました。 ところが,アバロンの担当者は「返済方法の見直しは一切認められない」と回答し,返済を遅らせるなら,緊急連絡先として教えている家族の携帯や勤務先に追い込みの連絡を入れるというのです。 家族にはアバロンからの借入れのことは秘密であるため,それは困りますと泣きついたところ,担当者は,「一つだけ方法がある」と話を切り出し,いくつかの銀行口座を作ってそれをアバロンに送れば,今回は利息の支払いを免除するし,それだけでなく1口座あたり1万円をくれるというのです。 Aさんは,「口座を渡すと犯罪になったりするのではないですか?」とアバロンの担当者に尋ねましたが,担当者がいうには「ウチは口座の管理がしっかりしているから犯罪になるということはない」との回答でした。 Aさんは,背に腹は代えられないし,アバロンのいうとおりであれば何万円か小遣いも手に入ると考え,この話に乗ることにしました。 Aさんは,その日のうちに銀行へ行き,窓口で,「生活費の支払いを目的として口座を開設する」と伝え,所定の手続きを経て,通帳及びキャッシュカードの交付を受けました。

上記事例のように,口座を新規に開設する際は窓口の銀行員から口座の利用目的を確認されます。 その際に, 「闇金に譲渡するための口座を作ります」 と言う人はいないでしょう。
言ってしまえば作れないのは分かりきっていますから,闇金に譲渡したり売却したりするつもりであることは隠し,虚偽の利用目的を告げて開設のための手続きを行うはずです。
この時点で,①「欺罔行為」の要件を充たし,これにより銀行員がご本人が自分で使う口座なのだなと誤信して錯誤に陥れば②「欺罔行為に基づく交付権限者の錯誤」を充たすと考えられます。
そして,その錯誤に基づいて銀行員から通帳及びキャッシュカードを交付されれば③「錯誤に基づく交付行為」が認められ,それを受け取れば,④「交付行為に基づく財物の移転」を充たします。
また,⑤「①~④の因果関係」は当然に認められます。
次に,⑥の故意とは,「罪を犯す意思」(刑法38条1項)のことを指し,故意が認められるためには,犯罪事実の認識・認容が必要とされています。
また,⑦の不法領得の意思というのは,権利者を排除し,他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い利用処分する意思を指します。 ⑥「故意」と⑦「不法領得の意思」も本事例では明らかといえるでしょう。

では,裁判所の考え方はどのようになっているのでしょうか。 平成19年7月17日最高裁判所第三小法廷判決(詐欺被告事件)では次のように判示しています。

銀行支店の行員に対し預金口座の開設等を申し込むこと自体,申し込んだ本人がこれを自分自身で利用する意思であることを表している というべきであるから,預金通帳及びキャッシュカードを第三者に譲渡する意図であるのにこれを秘して上記申込みを行う行為は,詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず,これにより預金通帳及びキャッシュカードの交付を受けた行為が刑法246条1項の詐欺罪を構成することは明らかである。

このように,第三者に譲渡する意図を隠して口座開設を申し込むという行為は詐欺罪の欺罔行為にあたり,これにより通帳やキャッシュカードの交付を受けた場合は一項詐欺罪になるということが明確になっています。

もっとも,通帳やキャッシュカードは財物(財産的価値のある物)といえるのかとお考えの方が万一いらっしゃるかもしれませんので,念のためここにも判例を引用しておきましょう。

(平成14年10月21日 最高裁判所第二小法廷判決)
【要旨】預金通帳は,それ自体として所有権の対象となり得るものであるにとどまらず,これを利用して預金の預入れ,払戻しを受けられるなどの財産的な価値を有するもの と認められるから,他人名義で預金口座を開設し,それに伴って銀行から交付される場合であっても,刑法246条1項の財物に当たると解するのが相当である。

通帳は財物にあたるということです。キャッシュカードも同様です。 以上により,闇金への譲渡・売買目的で口座を開設すると詐欺罪(刑法246条1項)が成立することになります。  

闇金に口座を譲渡しても問題ないケースは?

では,闇金に口座を渡したとしても問題ない(何のリスクも負わない)ケースはあるのでしょうか。
上記事例では「ウチは口座の管理がしっかりしているから犯罪になるということはない」等と説明して信用させようとしていますが,このほかにも例えば, 「受け取った口座はウチでは利用しない。節税目的で使う人に渡すだけだから大丈夫」 「もし警察から連絡が来たとしても紛失したといっておけば問題ない」 などと言って闇金業者は口座を譲渡させようとしてきます。

しかしこれに応じてしまうのは問題があります。
まず,前者についてはこれまで本稿をお読みになった方であればお分かりでしょう。 闇金に使われるかどうかなどは関係なく第三者に譲渡する目的で口座を開設すれば詐欺罪に該当するのです。
したがって,節税目的で使う人に渡すとしても問題ないとはいえず,闇金の説明には全く根拠がありません。

後者についてもやはり無理があります。 本当に単に紛失しただけなのであれば問題ないといえますが,そのような説明は警察で全く信用されません。 闇金と取引がある方が口座を紛失したらその口座が即闇金に利用されていたという状況はあまりに不自然だからです。その口座が複数に及ぶのであれば尚更です。
口座を紛失ということ自体滅多にないことですし,それを偶然犯罪者が拾って闇金や各種詐欺に利用するというのはありえない事態です。
よって,闇金と取引がある人が「口座を紛失した」と言っても警察では100%信用されず,逆に「怪しい」「悪質」と思われて厳しく追及されることになるでしょう。

闇金への口座売買で逮捕されるリスクは?

では,闇金に口座を売却したり譲渡したことで逮捕されるリスクはあるのでしょうか。
これはニュースで口座売買により逮捕された方の報道を見たことがあれば明らかですが,逮捕されるリスクは当然にあります。
しかも,ニュースで流れる逮捕報道は逮捕事例のほんの一部であり,実際は口座売買に手を染めた多数の方が逮捕されています。
当事務所でも,突然連絡が取れなくなった依頼者の方が実は口座売買で逮捕されていたという例が多数あります。
闇金へ銀行口座を渡すとその口座は必ず犯罪利用されます。
そして,犯罪利用された経緯は客観的な記録として残りますから,口座売買の事実は簡単に露見するのです。
口座売買は逮捕されるリスクが高い犯罪行為ですし,それにより得られる対価も些少なものですからとても割りに合うものではありません。

他の口座が利用できなくなる場合も

売却したことにより犯罪利用されている口座は,銀行や警察等の判断により取引停止措置(凍結)が執られることになります。
そして,その口座のほか,同一名義人の別口座も連鎖的に取引停止措置が執られることがあります。
また,新規に口座開設をしようとしても,過去に口座凍結された履歴があると開設を拒否されることもあります。
このように,口座売買を行うと,口座が使えなくなることにより事実上の社会的制裁を受けることになるのです。

まとめ-闇金への口座売買・譲渡は絶対にダメ-

以上のとおり,闇金との口座売買は詐欺罪等の犯罪にあたる違法行為ですから絶対に止めましょう。
譲渡した口座は闇金や振り込め詐欺,還付金詐欺等の犯罪に利用されて被害者が出るのですから口座譲渡の事実は必ず露見します。 逮捕されるリスクを負うことになりますし,実際に逮捕者も多数出ています(報道されているのはほんの一部です)。
また,口座譲渡者の情報は警視庁から全銀協に情報提供され,以後は口座の新規開設が事実上不可能となるなどの社会的制裁も受けることとなります。 被害者であったはずの方がいつの間にか闇金営業に加担していることになってしまうのです。

このような事態になるのだということをよくよくお考えいただき,闇金等の犯罪者に協力することのないようくれぐれもお願いいたします。
それに,被害者の方々全員が闇金への口座譲渡を止めれば闇金は営業の継続が不可能となります。 闇金を憎む気持ちや違法な営業を止めさせたいという気持ちがあるのなら,なおさら口座譲渡などもってのほかということになるはずです。
口座譲渡は自分のみならず社会全体に悪影響を及ぼします。 口座譲渡でその場を凌ぐという軽薄な行動を取る前に,今自分は何をすべきかを今一度真剣に考えてみてください。
闇金問題は口座売買・口座譲渡という犯罪に手を染めなくても簡単に解決可能ですから,お悩みの方は無料相談等をご利用ください。 (闇金問題は簡単に解決可能という点に懐疑的な方は「闇金がいう「弁護士に依頼してもムダ」は本当か」の記事を併せてお読みください)

追記-借りただけなのに口座が凍結される被害が多発中-

最近は口座を譲渡又は売買したわけではないのに口座凍結されて困っているとの被害相談が多数寄せられています。
闇金からお金を借りて普通に取引していただけなのに銀行口座がいきなり止められて預金が引き出せなくなるという被害です。 闇金と取引をするだけで上記不利益を受けることがあり得ます。
口座を凍結されることによって生じる生活上の不利益を避けるために,闇金と取引中の方はすぐに当事務所までご相談ください。

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